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2008.09.09 (Tue)

SS ~『セプテンバー・ナインス』~

せっかくの美希の誕生日ですので、約1年前、掲示板に投稿した美希誕生日記念の一話完結SSも掲載しておこうかと思います。
今見返してみると思うところは多々ありますが、今回はあえて修正せずそのまま載せておこうかと思います。
一人でも多くの方が楽しんでいただければ幸いです。

【More・・・】

執筆者 jihad
完結3作目
執筆開始 2007/09上旬
完成 2007/09/11
初出 2007/09/11 [ひなたのゆめ]ハヤテのごとく! / サブ小説感想掲示板
文章量 約12KB


------------------------------

~『セプテンバー・ナインス』~


ふぅ……

まだ少しだけ、だるい感じが残っている。
面倒くさくてだるい、という訳ではなく。
3日前から風邪で学校を休んでいるから、身体的にだるいという意味で。


幸い、今は熱もすっかり下がったけれど。
元々そこまで高熱だった訳ではないし、昨日の時点でだいたい回復していたのだ。
今日はまだ本調子ではなかったので、大事をとって休む事にしただけで。

朝からずっと寝たので調子は大分よくなったけれど。
まだどこかだるい感じが残っている、そんな感じ。
また寝ようかとも思ったが、しかし寝すぎても逆に調子が狂う気もする。
むしろそれ以前に、たくさん寝すぎてこれ以上寝る気分にもなれないくらいだ。

こうなってしまうと、とても暇だから困る。
最近は特に趣味や凝っているものなどもないし。
かといって風邪で学校を休んでいる以上、迂闊に外に出るのもまずい。


ふと時計を見ると、もう少しで4時になろうかという頃合だった。
この時間帯だと、テレビも特に興味を引くものはなさそうだし。


……今頃、皆はどうしているだろう。
時間からして、ちょうど授業もホームルームも終わった頃だろうか。
それぞれ部活や家へ向かったり、教室に残ってわいわい騒いだりしているのだろう。

どうせ明日から土日なのだから、今日は多少頑張って行けばよかっただろうか。
大抵授業は果てしなくだるいが、休み時間や放課後に皆と居る時間は嫌いではない。

……一応朝の時点でまだ少し調子がよくなかったのは事実だし、放課後まで保健室で寝ているという手もあったな。
そうすれば今頃はゆっくり休めた上に退屈もしなかったかもしれない。
少し失敗しただろうか?

そんな他愛もない事を考えていたが、ふと携帯が鳴って意識を引き戻された。


――【メール受信 桂ヒナギク】――

……ヒナからか。どうしたのだろう。

『美希、具合はどう? 少しはよくなったかしら?
 後で様子でも見にちょっと寄ろうかと思ったんだけど……
 あまり具合が良くないときに行くと却って迷惑だし、どうかなと思って。』

……全く、律儀な奴だ。
今時、風邪で数日休んだくらいで見舞いも何もないだろうに。
まぁ、そういう所が長所のひとつでもあるのだけれど。



しかし、こうして心配してくれる事はやはり嬉しかった。

親たちは政治家という職業上、家を空ける事は茶飯事だ。
当然娘が風邪で寝込んでいようと例外ではなく。
よほど酷い病気や怪我でもない限り、仕事を優先させなければならない。

今は秘書たちを連れ、一週間ほど前から地方へ出掛けている。
どんな仕事をしているのか、或いは他のお偉いさん方と交流でも深めているのか……
分からないし、特に興味もないのだが。

そんな訳で今、私の事を心配してくれるような人はいなかったのだ。
もちろん、代々そんな家系の家族で育ってきた為慣れているし、この歳になって今更寂しいとも思わない。

しかし、両親も秘書や運転手たちもみんな出掛け、ハウスキーパーも時間通りにやってきて淡々と家事をこなしていくだけ。
話し声ひとつ響かない、ただ広く静かなだけの家。
そんな中で風邪を引き、自分の部屋に篭ってひとり寝ているだけ。
そんな状況だと、多少虚しくなってくるのも仕方ないと思う。

そんな中自分の事を心配して、こうしてわざわざメールまでしてくれるような人がいると、やはり嬉しいものだ。
友達がいるというのはいいものだ、と。こういう時にひしひしと実感できる気がする。
……早く皆の顔が見たいものだ。



さて、メールの返事はどうしようか。
見舞いに来ようとしてくれる事は嬉しいし、有難い。
しかし、ヒナも生徒会の仕事で色々と忙しいだろう。
……まぁ、普段私たちが手伝わないせいで余計忙しくなっているのだろうが。

勿論、これからも手伝う気はほとんど無いのだが、その忙しい中わざわざ見舞いにまで来させてしまうのはさすがに少し気が引ける。
会って顔を見たい気持ちもあるが、ここはこれ以上迷惑をかけない為にも遠慮しておくか。

『心配かけて悪いわね。
 体調は大分よくなったから大丈夫。
 ヒナは生徒会の仕事を頑張って頂戴。』

送信ボタンを押し、私はまたベッドに仰向けに転がった。
しかし、その時少し奇妙な感じがした。


何故だろう?
メールが来た時は、嬉しくて気分が良かったはずのに。
送信し終わった瞬間、どこか虚しさを感じてしまった。
誰も来ない、と。そう思っただけで。


……やはり素直に"少し顔を見せに来てくれ"とでも送っておくべきだったか。
普段少し困らせて楽しんだりしているのに、こういう時に限って何故か遠慮してしまうようだ。
この3日間ずっと風邪でひとりきりという事もあってか、少し弱気になっているのだろうか?


ふと一瞬だけ、胸が少し締め付けられたような気がした。
虚しさを、或いは弱気になっている事を自覚してしまったからだろうか?


……そうか。今、私は"寂しい"んだ。
こんな気持ちをこれほどはっきり感じたのは、随分と久しぶりな気がする。
何だか少し、私らしくないだろうか?

「よし、こういう時は寝るに限るな」

ごまかすようにわざと声に出し、布団を被った。
やはり朝から寝ていた為か、あまり眠くはなかったのだが。
寂しさを紛らわせる為に、枕を抱いて無理矢理目を閉じた。
何とも言えない息苦しさのようなものを感じながら、何も考えずにただ寝る事だけに努めた。

寝ようと思うと逆に寝付けない事もあるが、今は風邪を引いているからか。
少し経つと、段々と眠気を感じてきた。
眠ってしまえば、この息苦しい寂しさからも逃れられるだろう。

早く、寝れれば……いい……な……





◇◇◇






「ふぅ~っ」
「うひゃぁっ!?」

突然、耳に何か違和感を感じた。
あまりにも急な事で、何が起こったのか分からなかった。


「ふふふっ、やっとお目覚めかな?」
「……理沙?」

すぐ真横から聞こえた声に振り向くと、ベッドの端に腰掛けて腕を組んだ理沙が、不敵な笑みを浮かべているのが見えた。

「ふっ、何が起こったのか分からないという顔をしているな。仕方ない、教えてやろう!」

ピッと人差し指を立て、私の目の前に持ってくる理沙。

「……とりあえず、顔も指も近いんだけど……」
「ん、スマン」

ベッドから立ち上がった理沙は、近くのイスを持ってきて腰掛けた。

「それで、何がどうなってるわけ?」
「それはだな……
 来てみたはいいが熟睡、呼んでも布団を剥いでもつついてみても起きる気配がない。
 そこで耳に息を吹き掛けてみたら、すごい勢いで飛び起きた訳だ。いやぁ、面白かった」

耳に感じた違和感はそれだったのか。
いや、それはいいとしても問題は……

「まず、どうやって部屋に入ったの?」

そう、そこだ。
どうして理沙が私の部屋に入ってこれたのか。

「うむ、電話を掛けても出ないしな。
 インターホンを鳴らしたらハウスキーパーの人が来てな。
 少し渋られたが、白皇の生徒手帳を見せたら入れてくれたぞ」

……なるほど。
"白皇"で"朝風"と来たら入れない訳にはいかない、か。

「なるほどね。それで、何か用事?」
「あぁ、面白い動画や写真でも撮ろうかと思ってな。
 しかし、あまりヒナばかり撮っていてもつまらんし、そういう訳で……
 ここはひとつ、"クールな少女の意外な一面"と題して可愛いネグリジェ姿で枕を抱きかかえ無防備に寝てる姿を盗み撮ぐぇっ!?」

とりあえず、みぞおちに一撃喰らわせた。

「……スマン、本当は、その……アレだよ、アレ……」
「……何?」

理沙はそっぽを向いて、頬をポリポリと掻いている。
言いよどむ理沙など、かなり珍しい光景だった。

「だから……見舞いさ、見舞い!
 3日も学校に来てないから心配になって……な」
「そう、か……」

何だかんだ言いつつ、私を心配してくれていた。
胸の奥がじんわりと暖かくなったような気がした。


「あぁ~、しかしアレだ、発見だな」
「……何が?」

慌てて取ってつけたように言い出し、私の方に向き直る理沙。

「いや、"バカは風邪を引かない"のバカは、勉強が出来ないの意味ではないのだと思ブッ!?」

感動も束の間、気付けば今度は顎に一撃見舞っていた。

「余計なお世話よ」
「くっ……普段認めている事なんだから、何もどつかなくてもいいじゃないか……」

確かに勉強が出来ないのは事実だし、自分でも認めてはいるが……
何も見舞いに来て言う台詞でもないだろうに。

……まぁ、これが理沙なりの照れ隠しなのだろうけど。

「……理沙……」
「……ん……」

"ありがとう"という言葉は何だか恥ずかしくて言えなかった。
でも、理沙にはきちんと伝わったようだ。
お互いあまり柄ではないから、素直に口に出せなかったけれど。
とても、嬉しかった。




その心地よい静寂の中、突如インターホンの音が響いた。

「おっ、やっと来たようだな」
「来たって……何が?」
「ふっ、すぐに分かるさ」


しばらくして、ノックの音が響いた。
「……どうぞ」

その瞬間、バンとドアが開いて。
「やっほ~ミキちゃん♪」
「美希、調子はどう?」
「花菱さん、具合はよくなりましたか?」
「……大丈夫か?」

泉、ヒナ、ハヤ太君、それにナギまで。
理沙だけでなく、他のみんなまで来てくれるとは思ってもいなかった。

「……みんな……まさか来てくれるとは……」
「何言ってるんだ、当たり前だろう?」
「えっ?」

当たり前、と言った理沙。
今時風邪で見舞いに来てくれるだけでも珍しいと思っていた私にとって、少し戸惑う発言だった。


「……まさか……忘れてたのか?」
「何が?」
「……ふぅ、まさか本当に忘れているとは……」

ふと指を指す理沙。
その先を見ると、カレンダーがあった。

色が変わり始めた木々の写真の上に"9月 / September"の文字。
今日は金曜日。"Fri"の下の日付を辿っていく。
"9"と書かれたその欄には。

「あっ……」

"birthday"の文字が。

そう、今日は私の誕生日だった。
3日も学校に行っていなかったせいか、人との接触がほとんどなかったせいか。
……まさか、自分の誕生日を忘れているとは。

「誕生日だもの、やっぱり当日に祝ってあげたいじゃない?」
「具合が心配だったのですが、大分良くなったようで何よりです」
「……まぁ、せっかくの誕生日だから、な」
「と、そういうわけさ」


そうか、見舞いというだけではなく。
私の誕生日だから。
それを祝うために、わざわざ家に来てくれたのか。

だから、わざわざメールで具合がどうか聞いてきたり、直接様子を見に来たり。
家に来ても大丈夫かどうか、調べてくれたというわけか。

そうまでして当日に祝ってくれるなんて。
とても嬉しくて。


「ふふっ……はははっ……」

思わず声を出して笑ってしまう。
この空間が、とても暖かくて。
とても、居心地がよかった。


「「……」」
「あら? ナギ、ハヤテ君、どうしたの?」
突然押し黙ったハヤ太君とナギ。それに声を掛けるヒナ。

「……いや、花菱さんがそんなに声を上げて笑ってる所なんて、初めて見たので……」
「あぁ、驚いてな……」
「なるほど、ハヤ太君たちは、美希のこういう姿は初めて見たという訳か。
 ……しかし、それだけでここまで驚くとは……ふふっ、これは傑作だな」

なるほど、そういう事か。
しかし、そこまで驚かなくても良いだろう。
確かによく表情に出ないと言われるが……私だって笑う事くらいある。

「ちょっと心外ね、ふたりとも。
 ……私だって人の子、笑う事くらい……」
「あっ、いやっ! ……どうもすいませんっ……」
「……」

すぐさま頭を下げるハヤ太君と、ばつが悪そうに頬を掻くナギ。
その光景を見て、理沙とヒナは笑いを堪えている。

「まぁまぁ。何にせよ、元気そうで安心したわよ、美希。
 この調子だと、月曜日には学校に来られそうね」

そう言って微笑むヒナ。
確かに、月曜日には学校に行けるだろう。
それに、みんなの顔を見て話していたら、少し元気が出てきたような気もする。

「そうね。……勿論、月曜からも生徒会の仕事はやらないけど」
「もうっ、美希ったらっ」


理沙が笑い出した。
それに続いて、ヒナも、ハヤ太君も、ナギも。
そしてもちろん、私も。


皆で笑った。
こんなに声を出して笑ったのは久しぶりかもしれない。
楽しかった、そして嬉しかった。
"持つべきものは友"とはよく言った言葉だと思う。
いつもは口にこそ出さないものの、こういう時は特に強く、友達の有難さを感じる。

暖かくて、優しくて。
いつまでも浸っていたいような気がする、この居場所。
温もりの中、しばらくみんなと一緒に笑い続けた。

そんな、いつもより特別な9月9日。
何より暖かい、最高のプレゼント。
これからもずっと、こんな温もりの中に居たい。


~ 『セプテンバー・ナインス』 Fin ~
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