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2008.08.15 (Fri)

SS ~『悲劇を知らぬ僕らにも』~

さて、本日は終戦記念日ですね。
ということで、ちょうど一年前に執筆・投稿したSS、『悲劇を知らぬ僕らにも』をこちらにも公開したいと思います。
「戦争と平和」をテーマにしてハヤごとでSSを書いたものですが、本作は死ネタのような重い話ではありません。時間軸がハヤテたち2年生の修学旅行時・舞台が沖縄という点以外は原作準拠となっておりますので安心してお読みください。

【More・・・】

執筆者 jihad   
完結2作目
執筆開始 2007/8/6
完成 2007/8/15
初出 2007/8/15 [ひなたのゆめ]ハヤテのごとく! / サブ小説感想掲示板
文章量 約11KB


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~『悲劇を知らぬ僕らにも』~



「……私たちは、本日の貴重な体験を経て、改めて平和の大切さを実感し……」
 
 目の前には平和記念資料館の館長さん、横には引率の教頭先生と学年主任の先生、加えて後ろには僕たち2年生の全クラスの生徒が見守る中。
 緊張の素振りなど微塵も見せずに、堂々と。紙などは一切見ずに、暗唱で。長い、しかし簡潔で分かりやすい、まさに模範というべき完璧なスピーチを。
 学年代表として、凛とした声を響かせている。
 普通だったらいくら優秀な生徒が多いとはいえ、飽きてあくびでもしてしまうだろう。
 ところが、皆を見事に惹き入れ、集中させている。
 この大役をここまで立派に勤められるのは、もちろん一人しかいない。


 今日は修学学校の5日目。僕たちの周りにあるのは、平和の礎。……そう、沖縄。
 ……5日目って、普通3泊4日じゃ……
 そんな一般人感覚全開の僕のツッコミはもちろんこの超お金持ち学校に通用するわけがなく。

 白皇学院の修学旅行は、何と10日間もあるそうで。しかも3日分はちゃんと平和学習や自然学習をするけど、残りは完全にリゾート気分らしい。
 当然ホテルは超高級。貸切なのは言うまでもなく。
 くっ……なんてブルジョワなんだ。こんな大金を、まるで給食費か教材費みたいな感覚でポンと払うなんて。

 以前の僕だったらこんな贅沢はとても考えられなかったな。潮見高校では3泊4日の修学旅行のために、1年生の時から毎月積み立てがあったというのに。
 さすがにお金持ちは違うなぁ。
 中でもお嬢さまはきっと、教材費どころか文房具を買うくらいの感覚しかないんだろうなぁ。


「本日は貴重な体験をどうもありがとうございました。私たちも平和の大切さを改めてよく考え、今後に生かしていきたいと思います」
 スピーチの後、全員でお礼を言い、代表が館長さんに花束と千羽鶴を渡すその姿を見届けたら、後は自由見学。
 さっきは平和資料博物館内の見学が主だったため、平和の礎やその他の物をきちんと見るのはこの時間だった。
 年に数回くらいはあらゆる海外でリッチな休日を過ごしているだろう皆も、沖縄は逆にほとんどの人が初めてみたいだ。だからこんなお金持ち学校があえて国内なのだろうか。

 とはいえ、最初は熱心に色々と見学していても、やはり時間が経つと飽きてしまう人が多いみたいで。それでも、普通の高校に比べたらずいぶん真面目なほうなのだろうけど。
 やはり長いと段々とだらけてくるようで、おしゃべりに興じたり少し離れた所で騒いでいたり。
 礎に刻まれた戦没者名簿から自分と同じ苗字を探している人なんかもいた。見ている分まだましと考えるか、そんなくだらない遊びに使うべきでないと考えるべきか。

 僕も少し休憩しようかな? 
 ……まぁ、僕が沖縄に旅行に来るなんてもう一生ないかもしれないし、もう少し見るのも悪くないか。夜逃げやら転校やらで満足に学べることの少なかった僕にとって、勉強というのはあまり苦痛ではないし。
 いや、苦痛でないとは言っても、紙とペンを持ってやる勉強は決して得意ではないけど。


 そのまま見ていたけれど、しばらくするとさすがに僕も疲れてきた。
 周りを見ると、もうかなりの人がだらけている。少し向こうからも賑やかなおしゃべりが聞こえてきた。

「暑いっ! もうやってられん。よし、売店でアイスでも買いに行くぞ!」
「いいね~、アイス♪ ……でもいいのかなぁ? 自由見学って言っても、休憩の時間は別にあるんでしょ?」
「ふっ。最も大切なのは今をどう生きるかさ。確かに過去も大事だが、そればかりに捕らわれていてはいけないのさ!」
「な、なるほど……今日の理沙ちんはなんだか知的だね~」

 どうやら瀬川さんと朝風さんのようだ。まぁ、あの二人にしてみれば長い時間頑張ったほうなのかもしれないけど。
 それにしても朝風さん、あなた、それっぽいこと言ってますけど結局めんどくさいだけじゃあ……

「全く、あの二人ったら。しょっちゅう休んでるくせに、まだ休むみたいね」
「あ、ヒナギクさん……」
 やはり真面目なヒナギクさん。二人の態度に少々ご立腹のようだ。ていうかあの二人、そんなしょっちゅう休憩入れてのか……
「ハヤテ君はずいぶん真面目ね」
「まぁ、こういう場所で学べる機会なんて滅多にないですからね」
「ふふっ、そうね。……全く、あの娘たちには今の言葉を聞かせてあげたいくらいよ」
 苦笑するヒナギクさん。
 最も、あの人たちがそれくらいで変わるかどうかは少し疑問だけれど。
「ヒナギクさんだって真面目に見学してるじゃないですか。スピーチもすごかったですし」
「私だってそんなでもないわよ。スピーチはまぁ別として、正直言うと見学のほうは少し飽きてきちゃって。最初は興味深くていいけれど、さすがにこれだけ長いとね。だから今回はあの二人にもあまり強く言えないの」
 あれだけ生徒の模範のような人でも飽きてしまうのなら、仕方ないことなのかもしれないな。
 じゃあね、と言って去っていったヒナギクさんを見ながら、そう思わずにはいられなかった。

 僕もずっと字を見てばかりだったせいか、さすがにこれ以上は気が進まない。残り数十分くらい、気楽に散歩したってバチは当たらないだろう。

 たくさん並ぶ礎も圧巻だけど、周りの景色も綺麗なものだ。
 礎が並んでいる中央には噴水があり、熱い沖縄の陽に当たった水が輝いている。周りは緑に囲まれているし、端の方に行けば碧く透き通る海だって見える。
 穏やかに吹く潮風が頬に心地良い。

 東京ではとても見れない光景を楽しみながら、噴水を隔てて反対側の礎の群れを歩いていく。
 その中で、僕はふと気づいた。

「あれ?」

 もうほとんどの生徒が木陰に入ったり、海を眺めておしゃべりをしているため、礎の近くにはほとんど人がいなかったけれど。
 その礎の群れの中に、一人目を閉じて黙祷を捧げている姿が見えた。

それだけならまだ違和感はないのだけれど。真面目な人だな、くらいで驚くこともなかったはず。

……その人が、普段「面倒くさいことは嫌い」などと明言している人でなければ。







「……花菱さん?」
「ん? ……あぁ、ハヤ太君か」
 僕が声を掛けて初めて気づいたようだ。
「何か用?」
「いや、特に用があるわけじゃないんですけど……」
「……大方、面倒くさがりな私がこんなことしてるのが珍しいと思ったんでしょう?」
「え!? ……いやっ! そのっ、別にそういうわけじゃ……」
 まさにその通りだけれど。何で分かったんだろう? 鋭い花菱さんの勘には毎度ドキッとさせられる。
「……本当に分かりやすいのね。そんな慌ててたら、そうですって言ってるようなものよ」
「どうもすいません……」
 どうやら僕は顔や行動に出やすいらしい。弁明する間すらなく、とにかく頭を下げた。
 ……どうも花菱さんには頭が上がらないなぁ。

「まぁ、驚くのも無理はないけどね。……自分でも柄じゃないとは思うわ」
 そう言ってまた礎に目を戻すその横顔はいつもと違って、どことなく憂いを帯びているように見えた。

「私ね、こういうことだけはちゃんとやるのよ?」
 唐突に呟いた花菱さん。目はこちらに向かないまま。
「僕もきちんとやることはやるんですけどね。やはり現実味が湧かないといいますか」

 やはりそれが、多くの生徒が熱心になれない理由だと思う。
 平和は大切、戦争はいけない。分かってることだけど、現実味がない。まるでお話の中の世界のようで。

「誰だって、親しい人や大切な人が亡くなったら悲しいでしょう?」
「え、それはそうでしょうけど」
 もちろん、誰だって身近な人に2度と会えなくなるのは悲しいに決まっている。それは分かるのだけど……花菱さんの言おうとしていることの真意が、僕にはいまひとつ分からなかった。

「だったら、ハヤ太君。もし、あなたの大切な人たちが亡くなったら、って想像してみるとどう思う?」
「え?」

 僕の……大切な人たちが死んでしまったら?

 僕の、大切な人たち……

 お嬢さま、マリアさん。
 伊澄さんに咲夜さん。
 西沢さん。
 ヒナギクさんに瀬川さん、朝風さん。そしてもちろん花菱さんも。
 他にもたくさん、たくさん。今の僕には、数え切れないほど大勢の大切な人たちがいる。
 その人たちが、もし死んでしまったら……

 考えた瞬間、ぞっとした。背筋が凍り、頭が真っ白になるような感覚。軽く眩暈すら覚え。

 ――嫌だ――

 脳が、これ以上想像することを拒否した。

「どう思った?」
「……怖い……です……」

 こんなこと、今まで考えたことすらなかった。
 いつも一緒にいる人たちが。泣いたり、怒ったり、そして笑いあったり。そんな日常の、当たり前の光景から、1人、ぽっかりと抜け落ちる……

「戦争だって同じものよ。次々に、誰かの大切な人が死んでいくんだから」

 確かに。誰だって、当然誰かの大切な人なわけで。
 明日は自分の大切な人が死ぬかもしれないと怯えながら暮らしていく。

 それが……戦争なんだ。


「ま、全部死んだ祖母の受け売りなんだけど」
 ふっと軽く口元を緩め、僕の方を向いたその横顔には、ほんの微かに、しかし確かに優しい微笑みが浮かんでいた。
「花菱さん……」
「戦争なんて漠然とした言葉でも、こうして自分に置き換えてみると想像がつくでしょう?
 ……だから私、こういうことはちゃんとやるのよ」

 漠然としすぎて、ぼんやりとしか分からなかった戦争という言葉。でも、こうして自分に置き換えてみると、確かに現実味が湧いてくる。

 今の話を聞いて、今回の旅行がとても有意義になったような気がする。


「ふぅ……何だか、いつもの私らしくなかったな」
「……はは、そうですね」
 確かに意外な一面を見た気がする。たまにはいいと思うけれど。
「よし、ハヤ太君。もう休憩時間だ、アイスでも買ってきてくれ。……無論、ハヤ太君のおごりでな」
「えっ……」
「売店でクレジットカードが使えるとでも?」
 さすが、お金持ちは違いますね……
 従っておかないと後が怖そうだし、これは買ってくるしかなさそうだ。

「分かりました、行ってきますよ」
 軽くため息をついてから、僕は走り出した。

「急ぐんだぞー、1分以内だ」
「無茶言わないでくださいっ!」

 背中にかかる声に返しつつ、それでも速度は緩めず駆け続ける。
 沖縄の陽は厳しいけれど、流れる風は気持ちよかった。


 視界の隅に小さな花が目に留まり、思わず立ち止まった。この暑い気候の中、力強く咲いている。
 こんな些細な日常が、平和というものなんだろうか。ふとそんなことを思って、思わず笑みが零れた。
 1人の人間が出来ることなんて限られているけど、それでも平和を考え願うことくらいは誰だって出来る。
 皆が願えば、それは自然に達成されるはずなのだろう。

 ……さて、早く買って来ないと怒られちゃうな。
 この穏やかな日常の中で食べるアイスは、きっと美味しいことだろう。



~ 『悲劇を知らぬ僕らにも』 Fin. ~







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本作をお読み下さり、ありがとうございました。
さて、いかがでしたか?
もし、ハヤテSSとして楽しみつつ、少しでも平和について考えていただけたなら嬉しいです。


また、お時間が有りましたら、コメントやブログ拍手のコメントにてご意見・ご感想をお聞かせ下されば幸いです。
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